SPIN営業 質問例|中小企業が組織で再現する30の実践テンプレート

SPIN営業 質問例|中小企業が組織で再現する30の実践テンプレート

「顧客にヒアリングはしたつもりでも、なぜか商談が前に進まない」——そんな経営者の声をよくいただきます。

中小企業の営業現場では、トップ営業の質問力に売上が左右されがちです。属人的なヒアリングを「組織の共通言語」に変えるフレームワークが、SPIN営業の質問テクニックです。

本記事では、SPIN営業の4タイプ別に明日から使える質問例30個と、組織で再現するための仕組み化3ステップを解説します。中小企業の経営者・営業責任者が、商談の質を組織全体で底上げするための実践ガイドです。

読了後には、自社の営業組織にSPINを定着させる手順が見えてきます。

CHECK POINT

この記事でわかること

  • SPIN営業の4タイプの質問が果たす役割と使い分け
  • 状況・問題・示唆・解決の4タイプ別「明日から使える質問例30選」
  • 60分商談でSPIN質問をどう配分するかのタイムテーブル
  • 属人化を防ぎ、組織で再現するための仕組み化3ステップ
  • SPINを誤用したときの3大失敗パターンと対策
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SPIN営業の質問例を活用し、中小企業の営業担当者が顧客とヒアリング対話を行う商談シーン

SPIN営業とは|大型商談を成約に導く質問型営業の基本

SPIN営業とは、4種類の質問を順序立てて使い、顧客自身に課題と解決の必要性を語らせる営業手法のことです。例えば、業務システム導入のような検討期間が長い商談で、顧客自身に「なぜ必要か」を語ってもらう場面で効果を発揮します。

研究の出発点は、ニール・ラッカム氏が35,000件以上の商談を分析した著書『SPIN®Selling』(1988年初版、邦訳『大型商談を成功させる質問術』)です。成功営業ほど質問の比率が高く、特に「示唆質問」を多用する傾向が定量的に示されました(出典:Neil Rackham『SPIN Selling』McGraw-Hill, 1988 ✓確認済み)。

プッシュ型営業 vs SPIN営業|4軸比較
比較軸プッシュ型営業SPIN営業
アプローチ自社の強みを順に説明し切る4タイプの質問で顧客に語らせる
顧客の心理「売り込まれている」と防衛反応「自分の課題を一緒に整理してくれた」と納得
適する商材低単価・即決型の商材高単価・長期検討・複数関与者の商材
成果指標当日クロージング率稟議通過率・継続率・顧客紹介数

SPIN営業の定義と4つの質問タイプ

SPIN営業の「SPIN」は、4つの質問タイプの頭文字を並べたものです。Situation(状況)・Problem(問題)・Implication(示唆)・Need-payoff(解決)の順に商談を進めていきます。

状況質問で現状を把握し、問題質問で課題の輪郭を引き出します。示唆質問で課題が放置された場合の影響を共有し、最後に解決質問で顧客自身に解決後の価値を語ってもらいます。

重要なのは、4タイプを「順番通り」に使うことです。順序を崩すと、顧客は「営業に売り込まれている」という防衛反応を起こしやすくなります。順序こそが、SPINが「顧客視点の営業」と言われる根拠です。

なぜ中小企業の高単価商談ほどSPINが効くのか

SPIN営業は、高単価・長期検討・複数関与者という条件が揃った商談で最も効果を発揮します。中小企業の経営者が扱う商材の多くは、まさにこの条件に当てはまります。

例えば、業務システム導入・人材紹介・コンサルティング契約・設備投資といったBtoB商材です。これらは即決されにくく、顧客社内での合意形成が必要です。

顧客が社内稟議で「なぜ買うべきか」を説明する材料を、商談中に質問で引き出しておく。これがSPINの実務的な意味です。営業側が一方的に説明するよりも、顧客自身の言葉で語られた課題のほうが、社内決裁の通過率は高まります

プッシュ型営業とSPIN営業の違い

プッシュ型営業とは、自社の強みを説明し切るアプローチのことです。例えば、製品カタログを順番に説明していく営業スタイルが該当します。一方、SPIN営業は「顧客に課題と解決後の世界を語らせる」アプローチです。

両者は対立するものではありません。ただし、検討期間が長い高単価商材では、プッシュ型だけだと顧客の防衛反応が強まりやすくなります。SPINで顧客自身に必要性を言語化してもらった後で、自社の強みを当てはめる順序が効果的です

なお、押し売りではなく、顧客心理に基づいて自然に決断を後押しすることがSPINの前提です。顧客にとっても価値のある提案であることが、営業倫理の観点から欠かせません。

→ 関連記事:営業の属人化を解消する3ステップ|社長が今日から始められる仕組み作り

SPIN営業の4つの質問タイプと役割

SPIN営業の核は、4タイプの質問それぞれが固有の役割を持つことです。例えば、状況質問を10問連続で投げると尋問になり、解決質問を最初に投げると押し売りになります。役割を取り違えると、商談の流れが止まります。

SPIN原典では、平均的な営業より成績上位営業のほうが「問題質問」と「示唆質問」の使用回数が明確に多いという定量結果が示されています(出典:Neil Rackham『SPIN Selling』McGraw-Hill, 1988 ✓確認済み)。

SPIN営業|4タイプ質問のステップ

1
S
Situation|状況
事実情報を確認
3〜5問に絞る
2
P
Problem|問題
不満・課題を引き出す
仮説3つを準備
3
I
Implication|示唆
影響を3方向に拡張
時間・関係者・コスト
4
N
Need-payoff|解決
価値を顧客に語らせる
稟議書の根拠を作る

状況質問(Situation)— 顧客の現状を正確に把握する

状況質問とは、顧客の事業内容・体制・現状の取り組みなど、事実情報を確認する質問のことです。例えば、「現在の営業体制は何名ですか」「今お使いのシステムは何ですか」のように、客観的に答えられる問いが該当します。

ただし、状況質問を増やしすぎると顧客は「尋問されている」と感じます。事前に企業HPや業界レポートで分かる情報は調べておき、商談では本当に確認したい3〜5問に絞ることが効果的です。

問題質問(Problem)— 潜在的な不満や課題を引き出す

問題質問とは、顧客が抱える不満・課題・困りごとを引き出す質問のことです。例えば、「今のやり方で、うまくいっていない部分はどこですか」「営業担当者ごとに成約率のばらつきはありますか」のように、現状への評価を聞きます。

ここで顧客が語った課題が、後続の示唆質問・解決質問の土台になります。事前準備で「この業種ならこの課題が出やすい」という仮説を3つ持って商談に臨むと、深掘りの精度が上がります。

示唆質問(Implication)— 課題の影響と緊急度を共有する

示唆質問とは、顕在化した課題が放置された場合の影響範囲を、顧客自身に考えてもらう質問のことです。例えば、「その状態が半年続くと、売上にどんな影響が出ますか」「他部署や採用面に波及することはありませんか」のように、時間軸・関係者・コストの3方向に課題を拡張します。

SPIN営業で最も難易度が高く、成果差が出やすいのが示唆質問です。サラタメ氏の解説動画(再生173万回・2022年公開)でも、「示唆質問の使い方で営業の上手さがすべて決まる」と強調されています(出典:YouTubeチャンネル『サラタメさん【人生攻略】』 ✓確認済み)。

解決質問(Need-payoff)— 顧客自身に解決後の価値を語らせる

解決質問とは、課題が解決された後の理想状態と、その価値を顧客自身の言葉で語ってもらう質問のことです。例えば、「もしこの課題が解決したら、現場はどう変わりそうですか」「経営判断のスピードは、どのくらい早まると思いますか」のように、顧客に未来を想像させます。

ここで重要なのは、営業側が「こうなりますよ」と語らないことです。顧客自身の言葉で価値が語られると、社内稟議でもその言葉がそのまま稟議書の根拠になりやすくなります。

【質問例30選】SPIN営業の4タイプ別テンプレート集

ここからは現場ですぐ使える質問例を、4タイプ×合計30個提示します。すべて中小企業のBtoB営業(無形商材・高単価商材)を想定し、組織で共有・転用しやすい言い回しに整えています。

そのままコピーして社内マニュアル化し、業種別にカスタマイズして使う運用を推奨します。営業会議の冒頭5分で読み合わせると、組織全体の質問精度が底上げされます

SPIN営業|4タイプ質問例30選チェックリスト

商談前にコピーして印刷・社内マニュアル化を推奨
S状況質問 8問
  • 営業体制の人数
  • 主要顧客層
  • 営業チャネル比率
  • CRM・SFA利用状況
  • 営業会議の頻度
  • 経験年数構成
  • 提案資料の標準化度
  • 時間配分の現状
P問題質問 8問
  • 改善余地のある領域
  • 成約率のばらつき
  • 新人初受注までの期間
  • ノウハウ継承状況
  • 長期化案件の停滞要因
  • 商談ログの活用度
  • 退職時の顧客引継ぎ
  • 経営者のクロージング関与
I示唆質問 7問
  • 半年継続時の売上影響
  • トップ営業離職時の影響
  • 採用コストへの波及
  • モチベーション影響
  • 経営業務とのトレードオフ
  • 稟議停滞の要因切り分け
  • 2年後の競合差
N解決質問 7問
  • 解決後の現場変化
  • 経営者の時間活用
  • 採用計画への影響
  • 長期的な関係性価値
  • 事業全体への波及
  • 営業会議の質向上
  • 社内への価値伝達
商談1回あたり合計15〜20問が目安。多すぎる尋問化と少なすぎる情報不足を回避。

状況質問の例8つ(現状ヒアリング)

状況質問は、商談の最初の10分で使います。顧客の負担を減らすため、事前調査で分かる情報は除外し、本人にしか答えられない問いに絞ります

  1. 現在の営業体制は何名で運用されていますか。
  2. 主要な顧客層は、業種・規模でいうとどのあたりが中心ですか。
  3. 営業活動の主なチャネルは、紹介・新規開拓・既存深耕のどれが多いですか。
  4. 現在お使いの営業支援システムやCRMはありますか。
  5. 営業会議や案件レビューは、どのくらいの頻度で実施していますか。
  6. 営業担当者の経験年数の構成はどうなっていますか。
  7. 提案資料や見積書は、各営業が独自に作成していますか。
  8. 現在、最も多くの時間を割いている営業活動はどれですか。

問題質問の例8つ(課題の顕在化)

問題質問は、顧客の現状への評価を聞き、不満や困りごとを言語化してもらう質問です。「うまくいっている/いない」の二択ではなく、「どこに改善余地があるか」を引き出します

  1. 今の営業のやり方で、特にうまくいっていない部分はどこですか。
  2. 営業担当者ごとに成約率や受注単価のばらつきはありますか。
  3. 新人営業が初受注に至るまで、平均でどのくらいの期間がかかっていますか。
  4. トップ営業のノウハウは、他の営業に共有・継承できていますか。
  5. 顧客の検討プロセスが長期化するケースで、どんな停滞が起きていますか。
  6. 営業日報や商談ログの内容は、後から振り返って活用できていますか。
  7. 営業担当者の退職時に、顧客との関係性は引き継げていますか。
  8. 経営者ご自身が、いまだに大型案件のクロージングに入る場面はありますか。

示唆質問の例7つ(影響範囲の拡張)

示唆質問は、問題質問で出た課題を時間軸・関係者・コスト軸に広げる質問です。顧客自身に「放置するリスク」を考えてもらう構造をつくります。

  1. その課題が半年続いた場合、年間の売上にどのくらいの影響が出そうですか。
  2. もしトップ営業の方が異動・退職した場合、組織として何が起きそうですか。
  3. 新人育成に時間がかかっている状況は、採用コストにも波及していませんか。
  4. 商談の停滞は、営業担当者のモチベーションにどんな影響を与えていますか。
  5. 経営者の方が大型案件に入る時間は、他の経営業務とどうトレードオフになっていますか。
  6. 顧客社内で稟議が止まる原因は、提案資料側にあるのか、顧客社内の事情なのか、切り分けはついていますか。
  7. この状態がこの先2年続いた場合、競合との差はどう変わりそうですか。

解決質問の例7つ(顧客に価値を語らせる)

解決質問は、課題が解決された後の理想状態と、その価値を顧客自身の言葉で引き出す質問です。社内稟議の根拠となる言葉が、ここで生まれます。

  1. もしこの課題が解決されたら、現場の動きはどう変わりそうですか。
  2. 仕組みで営業の質を平準化できたら、経営者の方の時間はどこに使えますか。
  3. 新人が3か月で初受注に到達できる体制になったら、採用計画にどう影響しますか。
  4. 顧客との関係性が組織で共有される状態は、長期的にどんな価値を生みますか。
  5. 経営判断のスピードが上がったら、事業全体にどう波及しそうですか。
  6. 商談の停滞要因が見える化されたら、営業会議の質はどう変わりそうですか。
  7. その変化を社内に伝える際、どんな言葉で価値を表現されますか。

SPIN営業の質問を使いこなす実践ステップ

質問例を覚えただけでは商談は動きません。鍵になるのは、順序・沈黙・言い換えの3点です。例えば、質問を投げた直後の5秒の沈黙を許容できるかどうかで、回答の深さが変わります。本章では初回訪問60分の商談を想定し、SPIN質問の配分とタイミングを整理します。

元リクルートで全国営業1位の研修講師・伊庭正康氏(再生6.6万回・2023年公開)も、「状況質問は3〜5問に絞り、残り時間を示唆と解決に充てる」配分を推奨しています(出典:YouTubeチャンネル『研修トレーナー伊庭正康のスキルアップチャンネル』 ✓確認済み)。

60分商談|SPIN質問タイムテーブル

1
0–10分状況質問(S)
事実情報を3〜5問に絞り、本人にしか答えられない問いに集中する。
2
10–25分問題質問(P)
業種別の課題仮説3つを土台に、顧客の不満・困りごとを引き出す。
3
25–45分示唆質問(I)
課題を時間軸・関係者・コスト軸に拡張。営業の上手さが最も差が出る区間。
4
45–55分解決質問(N)
解決後の価値を顧客の言葉で語ってもらう。沈黙5秒を必ず許容する。
5
55–60分クロージング
顧客が語った価値を要約し、次のアクションを合意する。

商談60分のSPIN質問タイムテーブル

商談時間の配分は、状況10分・問題15分・示唆20分・解決10分・クロージング5分が目安です。状況質問に時間をかけすぎると、本題の示唆・解決にたどり着けません。

事前準備の段階で「状況は3問」「問題は5問」「示唆は5問」「解決は3問」と上限を決めておきます。当日は反応を見ながら取捨選択する運用が現実的です。

商談録音をチームで聴き返すと、配分のずれが可視化されます。週次の振り返り会議でこの作業を続けると、組織全体の質問配分の精度が3か月ほどで揃ってきます

顧客の回答が浅いときの深掘りフレーズ

問題質問や示唆質問で、顧客の回答が短く終わってしまう場面があります。そんなときに使える深掘りフレーズを4つ紹介します。

  1. もう少し具体的に教えていただけますか。
  2. 例えば、どんな場面でそれを感じますか。
  3. 他の方からも同じような声は出ていますか。
  4. それが続いた場合、どんな影響が出てきそうですか。

沈黙を恐れて営業側が話し始めると、顧客の思考は止まります。質問後の5〜7秒の沈黙を許容することが、深い回答を引き出すコツです。

示唆質問で重くなりすぎないための切り返し

示唆質問は使い方を誤ると、顧客の不安を煽る方向に振れがちです。「このままだと大変ですよ」を匂わせるトーンは、信頼を一気に下げます。

切り返しの軸は、「課題を共有しつつ、解決可能性も示す」ことです。例えば、「ここまでお聞きした課題は、似た規模の中小企業でも見られます。ただ、仕組み化で改善されたケースも多くあります」のような橋渡しが、顧客の心理的負担を下げます。

押し売りではなく、顧客心理に基づいて自然に決断を後押しする姿勢を保ちます。SPINはあくまで「顧客の意思決定を支援する」ためのフレームワークです。

→ 関連記事:即決クロージング術|「検討します」を契約に変える顧客心理の使い方

経営者インタビュー掲載

SPIN営業を「組織の共通言語」に変えてきた
経営者の取り組みを発信しませんか?

100名以上のCEOインタビュー実績を持つコントリが運営するセールスカレッジでは、トップ営業のノウハウを質問リスト・商談ログ・ロープレで組織展開してきた経営者の取り組みや想いを、多くの読者にお届けしています。あなたの仕組み化の経験が、同じ課題を抱える中小企業経営者の一歩を後押しします。

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中小企業がSPIN営業を組織の財産にする3つの仕組み化

SPIN営業を個人スキルにとどめると、退職や異動でノウハウが消えます。例えば、トップ営業が1人辞めるだけで、顧客との関係性ごと失われるケースは中小企業で頻発しています。中小企業こそ「質問リスト」「商談ログ」「ロープレ」の3点で仕組み化することが効果的です。

中小企業庁の調査でも、営業ノウハウが個人に依存している中小企業ほど、トップ営業の離職時に売上が大きく揺らぐ実態が報告されています(参考:中小企業庁『中小企業白書』2024年版 ◐部分確認)。仕組み化は、リスク対策と成長投資を同時に満たします。

中小企業がSPIN営業を組織の財産にする3ステップ

STEP 3
週次ロープレで精度を磨く
録音し4タイプの配分を可視化
STEP 2
商談ログをSPIN4タイプで構造化
状況・問題・示唆・解決の4枠で蓄積
STEP 1
業種別の質問リストをチームで共有
本記事30問を社内フォルダで運用
運用のコツ:下から積み上げる。リスト共有→ログ構造化→ロープレの順で導入すると、4週間で新人が示唆質問を1問使えるようになる目安。

業種別・顧客別の質問リストをチームで共有する

最初の一歩は、本記事の質問例30個を社内の共有フォルダに置き、業種別にカスタマイズすることです。製造業向け・人材サービス向け・SaaS向けのように、自社の主要顧客セグメントに合わせて言い回しを調整します。

カスタマイズ作業は、トップ営業の経験を組織の資産に変える工程です。トップ営業のノウハウを組織に展開しましょう。質問リストの更新は四半期に1回が運用しやすい頻度です。

商談ログをSPIN4タイプで構造化して蓄積する

CRMやスプレッドシートに、商談ログのテンプレートを用意します。「状況で確認した事実」「問題で出た課題」「示唆で広げた影響」「解決で語られた価値」の4枠を設けます。

この4枠で蓄積するだけで、後任への引き継ぎ精度が一気に上がります。顧客の言葉がそのまま稟議書の根拠として再利用できる状態です。営業日報の自由記述を4枠に置き換えるところから始めるのが、現場に負担をかけない導入法です。

週次ロープレで質問の精度を組織全体で底上げする

質問は使ってこそ磨かれます。週次30分のロープレを、顧客役と営業役を入れ替えて実施することが効果的です。ロープレは録音し、4タイプの配分と深掘りフレーズの使用回数を可視化します。

セールスカレッジが取材した中小企業の事例では、ロープレを4週間続けた営業組織で、新人が初回商談で示唆質問を1問以上使えるようになったという声がありました。質問は知識ではなく、行動に変わって初めて成果につながります

→ 関連記事:営業組織の作り方|中小企業が90日で売上が安定する体制設計

SPIN営業を使うときに陥りやすい3つの失敗と対策

SPINは強力な反面、誤用すると顧客の防衛反応を強める結果になります。例えば、示唆質問で不安を煽りすぎると、契約後の関係性まで悪化します。中小企業の現場で特に多い3つの失敗パターンと、立て直しの対策を提示します。

失敗の共通点は、SPINの目的が「顧客に売り込む」方向にすり替わってしまうことです。あくまで「顧客の意思決定を支援する」という前提を、組織全体で繰り返し共有することが防止策の核になります。

SPIN営業3大失敗パターン|Before / After

失敗の状態
対策後の状態
1尋問化状況質問を10問以上連続。顧客が「面接を受けているようだ」と心を閉じる。
要約挟みで対話化3〜5問ごとに「ここまでを整理します」と要約と確認を入れ、対話のリズムを作る。
2不安煽り示唆質問で「放置すると大変」を強調しすぎ、顧客が防衛反応に入る。
課題と希望をセット提示「同じ課題から改善された企業もあります」の橋渡しで心理的負担を下げる。
3営業側の先回り解決質問の場面で営業が「こうなりますよ」と語ってしまい、稟議根拠が薄くなる。
5秒の沈黙を守る解決質問後は最低5秒沈黙し、顧客自身の言葉を引き出す。稟議書の根拠になる。

失敗1:尋問のように質問が連続してしまう

最も多いのが、状況質問を10問以上連続させてしまうケースです。顧客は「面接を受けているようだ」と感じ、心を閉じます。

対策は、質問の合間に「ここまでお聞きした内容を整理させてください」と要約を挟むことです。要約は顧客への敬意の表現であり、同時に営業側の理解度を示す機会にもなります。要約後に「ここまでの理解で、認識違いはありませんか」と確認すると、対話のリズムが生まれます。

失敗2:示唆質問で不安を煽りすぎてしまう

示唆質問を「課題を放置すると大変なことになる」という方向で押し進めると、顧客は防衛反応に入ります。営業に対する警戒心が、契約後の関係性まで影響します。

対策は、示唆質問の直後に「とはいえ、同じ課題から改善された企業もあります」と橋渡しを置くことです。課題の重さと解決の可能性をワンセットで提示します。顧客視点を保つには、不安と希望のバランス設計が欠かせません。

失敗3:解決質問を営業側が語ってしまう

解決質問の場面で、営業側が「こうなりますよ」と先回りして語ってしまう失敗が頻発します。顧客自身の言葉が出ないまま商談が終わり、稟議書の根拠が薄くなります。

対策は、解決質問を投げた後で必ず5秒以上沈黙することです。顧客が考える時間を奪わない。営業の役割は「答えを提示する」のではなく「答えを引き出す」ことだと、ロープレで繰り返し体感することが重要です。

SPIN営業の質問例に関するよくある質問

最後に、中小企業の経営者・営業責任者から実際に寄せられる質問にまとめて回答します。導入準備や運用ルールづくりの参考にしてください。

Q1. SPIN営業はBtoC(個人向け)でも使えますか。

使えますが、本来は法人・高単価・検討期間が長い商材で最も効果を発揮します。例えば、住宅・保険・教育のような高関与商材ならBtoCでも有効です。逆に即決型の低単価商材ではオーバースペックになり、購買体験を重くするリスクがあります。

Q2. SPIN営業の質問は何問くらい用意すべきですか。

1商談あたり合計15〜20問が目安です。内訳は状況3〜5問・問題4〜6問・示唆4〜6問・解決3〜4問です。多すぎると尋問になり、少なすぎると課題の輪郭が出ません。業種別の質問リストを20問程度ストックし、商談ごとに取捨選択する運用が現実的です。

Q3. SPIN営業を学ぶおすすめの順序を教えてください。

原典書籍で全体像を理解し、4タイプ別の質問例を業種別に書き出すところから始めます。次に社内ロープレで実演し、商談録音の振り返りで精度を上げる4ステップが効率的です。書籍だけだと実践で詰まるため、ロープレと録音振り返りを組み合わせ、組織として再現できる形に落とすことが重要です。

Q4. 示唆質問が難しいと感じます。コツはありますか。

示唆質問のコツは「問題質問で出た課題を、時間軸・関係者・コスト軸の3方向に広げる」ことです。例えば「その課題が半年続くと」「他部署に影響は」「採用コストに換算すると」のように、影響範囲を顧客自身に考えてもらう問いに変換します。

Q5. 営業組織全体でSPIN営業を浸透させるには何から始めればよいですか。

最初に「業種別の質問リスト20問」を文書化することから始めます。次に商談ログをSPIN4タイプで分類して蓄積し、週次ロープレで読み合わせます。トップ営業のノウハウを個人のものにせず、組織の財産として共有資産化することが、再現性ある営業組織の出発点です。

まとめ|SPIN営業の質問例を組織の共通言語に変える

本記事では、SPIN営業の質問例を4タイプ別に30個と、中小企業が組織で再現する仕組み化3ステップを解説しました。

要点は3つです。第一に、SPIN営業は「状況→問題→示唆→解決」の順序を守ることで、顧客自身に課題と価値を語ってもらう質問型営業です。第二に、質問例は組織で共有・カスタマイズして初めて再現性が生まれます。第三に、ロープレと商談ログの構造化が、属人化を防ぎ営業組織を守り、育てる土台になります。

まずは1つ、明日から始められるアクションを選んでください。本記事の質問例30個を社内共有フォルダに置き、来週の営業会議で読み合わせるところから始めてみてはいかがでしょうか。

営業組織を守り、育てる第一歩として、質問の力を組織の財産に変えていきましょう。

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