
社長依存から脱却する営業組織の作り方|自分がいなくても売れる仕組みを実現する方法
「自分が動かなければ、大型案件が取れない」「主要顧客との関係は、すべて社長である自分が築いてきた」——こうした状況に、心当たりはありませんか。
多くの中小企業では、社長自身が営業の最前線に立ち、会社の売上を支えています。しかし、この状態が続くと、社長が倒れたときや、事業承継のタイミングで、大きなリスクに直面することになるでしょう。営業の属人化は、企業の持続的な成長を妨げる最大の障壁といえます。
本記事では、一人に頼る営業から組織で勝つ営業へと移行するための具体的な方法を解説します。なお、属人化解消の具体的な手順については「営業の属人化を解消する5つの方法|社長依存から脱却し組織で売れる仕組みを作る」で詳しく紹介しています。乗り越えるべき3つの壁、実践的な3つのフェーズ、そして成功と失敗の事例から学ぶポイントまで、明日から取り組める内容をお届けします。
限られたリソースの中でも実現可能な、自分がいなくても売れる仕組みづくりの道筋が見えてくるはずです。
コンテンツ
営業の社長依存から抜け出すべき理由とは?
毎日商談に追われて疲れていませんか。社長が営業の最前線に立ち続けることで生じる問題は、想像以上に深刻です。ここでは、一人に頼る営業が抱える3つのリスクと、チームで動く体制によって得られる5つのメリット、そして最適なタイミングの見極め方を解説します。
社長が営業している会社に潜む3つのリスク
もし明日あなたが入院したら、会社の売上はどうなるでしょうか。社長が営業の中心を担う状態には、見過ごせないリスクが潜んでいます。こうした状況からの脱却方法は「社長依存から脱却する営業組織の作り方|自分がいなくても売れる仕組みを実現する方法」で詳しく解説しています。
まず、社長が倒れたら売上が止まるという危険性があります。病気や事故といった不測の事態はもちろん、長期出張や家族の介護など、営業活動を中断せざるを得ない場面は誰にでも訪れる可能性があるでしょう。
次に、大型案件を逃す可能性が高まります。社長一人で対応できる商談数には限界があり、複数の大型案件が重なった場合、どちらかを諦めなければなりません。実際、商談のダブルブッキングで悔しい思いをした経験はありませんか。
さらに、新規事業に手が回らないという課題も深刻です。日々の営業活動に時間を奪われると、市場調査や事業戦略の立案といった経営者本来の仕事が後回しになってしまうのです。
以下の図は、社長依存営業が引き起こす3つのリスクを整理したものです。
営業組織を持つ会社が得られる5つのメリット
チームで動く体制によって得られる変化は、経営者の働き方そのものを変えていきます。理想論ではなく、現実的なメリットに目を向けてみましょう。
社長の時間が戦略に使えるようになります。週に2日は営業以外の仕事に集中できるようになれば、新規事業の検討や人材育成にも注力できるでしょう。
安定した売上が見込めるようになります。複数の営業担当者が案件を持つことで、月ごとの売上の波が小さくなるのです。ある月は好調、翌月は不調といった極端な変動から解放されます。
事業承継がスムーズになることも大きなメリットといえます。顧客との関係が社長個人ではなく会社に紐づいていれば、次世代への引き継ぎも安心でしょう。事業承継における営業の引き継ぎ方法については「社長が営業している会社の事業承継を成功させる方法|顧客を守りながら次世代へつなぐ実践ガイド」で体系的に解説しています。
営業人材が育つという点も見逃せません。若手に案件を任せることで、次世代のエース候補が育っていきます。あなたが築いたノウハウを受け継ぐ人材が生まれるのです。
市場機会を逃さない体制ができます。複数の商談を同時進行できるようになり、ビジネスチャンスを最大限に活かせるようになるのです。
組織化を始める最適なタイミングの見極め方
「いつ始めればいいのか分からない」という経営者の悩みは、実は多くの方が抱えています。タイミングの見極め方を知ることで、第一歩を踏み出しやすくなるでしょう。
売上規模や人数ではなく、社長自身が「このままではまずい」と感じ始めたタイミングこそが始め時です。商談のダブルブッキングが増えた、休日も商談のことが頭から離れない、家族との時間が取れなくなった——こうした兆候が現れたら、体制を見直す時期といえます。
顧客から「社長以外の担当者でも大丈夫ですか」と聞かれるようになったら、それは市場からのサインかもしれません。
完璧な準備を待つ必要はなく、小さく始めることが成功への近道です。まずは一部の営業活動から標準化を図り、少しずつ権限を委譲していく方法が、多くの中小企業で成果を上げています。
社長が乗り越えるべき3つの壁
チーム体制を作ろうとすると、必ず直面する困難があります。「自分でやった方が早い」「メンバーに任せて失敗したらどうしよう」——こうした葛藤は、多くの経営者が抱える共通の悩みでしょう。
壁があるのは当たり前です。ここでは、その壁の正体を明らかにし、どう乗り越えるかを学べる内容をお届けします。
心理的な壁|権限委譲への不安と自分でやった方が早いという思い込み
「自分でやった方が早い」——この思いは、多くの経営者が抱える葛藤です。長年築いた顧客との関係を手放す不安も理解できます。
しかし、手放すことで得られる価値は大きいでしょう。社長が経営戦略に専念できる時間、組織全体の営業力向上、持続可能な成長基盤が手に入ります。
まずは小さな案件から任せてみませんか。失敗しても影響の少ない案件で、若手に経験を積ませる。そこから始めれば、心理的なハードルは下がっていきます。任せる相手の見極め方については「部下の営業タイプを見極めて強みを引き出す方法|中小企業経営者の営業組織改革実践ガイド」が参考になります。
技術的な壁|暗黙知を形式知に変える難しさと営業プロセスの言語化
社長の営業ノウハウを言葉にするのは、想像以上に難しい作業です。商談の進め方や提案の組み立て方など、無意識の判断を説明するのは大変でしょう。
「なんとなくやっていることを説明するのは苦手」——この声をよくいただきます。
初回訪問での質問内容など、簡単なところから言語化してみませんか。少しずつ積み重ねれば、組織の財産が育ちます。完璧な営業マニュアルを目指す必要はありません。まずは主力商品1つに絞って、あなたがいつもやっている商談の流れを書き出してみる。それだけで十分なのです。具体的な作成手順は「営業マニュアルの作り方|社長のノウハウを組織の財産に変える実践ガイド」で解説しています。
組織的な壁|メンバーの抵抗と新しい仕組みの定着に時間がかかる現実
新しいやり方を導入すると、「今までので良い」と抵抗するメンバーもいます。長年の習慣を変える不安や、新しい仕組みへの戸惑いは自然な反応でしょう。
定着には時間がかかります。焦る必要はありません。
月1回の営業会議で成功事例を共有し、失敗を学びの機会とする文化を作ることが大切です。少しずつ進めることで、やがて現場から「新しい方が良い」という声が上がってきます。営業チームのマネジメントに悩んでいる方は「営業マネジメントで悩む理由と解決の糸口|部下が動かない本当の原因を現場目線で解決」も参考になるでしょう。変化を強制するのではなく、メンバー自身が価値を実感できる環境を整える。それが定着への近道です。
営業組織を作る3つのフェーズと具体的なステップ
チーム体制への第一歩を踏み出すには、完璧を目指さなくても大丈夫です。大切なのは、小さく始めて少しずつ広げていくこと。
ここでは、一人に頼る営業からチームで勝つ営業へと移行するための3つのフェーズを紹介します。それぞれのフェーズで何をすべきか、具体的なステップを見ていきましょう。
フェーズ1|現状の可視化と意識改革から始める
まずは社長自身が何に時間を使っているか、1週間の営業活動を記録してみましょう。手帳に「9:00 A社商談」「13:00 提案書作成」と書き込むだけで構いません。
1週間続けると、営業プロセスのどこに時間がかかっているか、どの活動が成果につながっているかが見えてきます。この可視化が、チーム体制への意識改革の第一歩となるのです。
以下の図解で、具体的な記録方法を確認してみましょう。
| 日付 | 時間 | 活動内容 | 所要時間 | 成果 |
|---|---|---|---|---|
| 月曜 | 9:00 | A社商談(新規開拓) | 1.5時間 | 次回アポ獲得 |
| 月曜 | 14:00 | 提案書作成 | 2時間 | – |
| 火曜 | 10:00 | B社フォロー電話 | 0.5時間 | 見積依頼獲得 |
| 火曜 | 15:00 | C社訪問(既存顧客) | 1時間 | 追加発注の相談 |
| 水曜 | 9:30 | 社内会議 | 1時間 | – |
| 水曜 | 13:00 | D社商談(紹介案件) | 2時間 | 契約内諾 |
| 木曜 | 10:00 | 見積作成(B社) | 1.5時間 | – |
| 木曜 | 14:30 | E社電話商談 | 0.5時間 | 資料送付依頼 |
| 金曜 | 9:00 | 週次振り返り | 0.5時間 | – |
| 金曜 | 11:00 | F社初回訪問 | 1.5時間 | ヒアリング完了 |
フェーズ2|小さく始める仕組み化で段階的に権限委譲する
すべての営業を一度に任せる必要はありません。まずは商談後のお礼メールの型から始めましょう。冒頭文、商談内容の要約、次のアクションという流れを決めておくだけです。
見積書の作成方法や初回訪問時のヒアリング項目など、標準化できる部分を一つずつ型にしていきます。完璧を目指さず、まず実践してフィードバックを受けながら改善していく。このサイクルで権限委譲が進みます。
最初の3ヶ月は、失敗を前提に考えましょう。型通りにやってうまくいかないこともあります。それは型を改善するチャンスなのです。
フェーズ3|組織としての営業力を定着させるサイクルを確立する
仕組みが回り始めたら、週1回の振り返りミーティングから始めましょう。「今週うまくいった商談は何か」「なぜうまくいったのか」を共有するだけで、チーム全体の営業力が向上します。
受注率や商談数といったKPIを設定し、週1回の振り返りで数値を確認する習慣をつけましょう。改善が見られなければ課題を話し合い、小さな改善を重ねる。この積み重ねが、自分がいなくても売れるチームへの道となります。
営業の属人化を乗り越えてきた
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成功事例と失敗パターンから学ぶ実践のコツ
チーム体制づくりに取り組んだ企業の実例からは、成功も失敗も多くの学びが得られます。同じ課題を抱える中小企業だからこそ、他社の経験を自社に置き換えて考えることで、より確実な一歩を踏み出せるでしょう。
ここでは、実際の取り組み事例と陥りやすい失敗パターン、そして明日から始められる具体的なアクションをご紹介します。
社長依存から脱却に成功した中小企業の事例
従業員20〜30名規模の中小製造業では、創業社長が主要顧客との関係をすべて担っているケースが少なくありません。こうした企業がチーム体制づくりに成功する際には、いくつかの共通したパターンが見られます。
半年から1年をかけて、社長の営業プロセスを徹底的に言語化します。商談の進め方や提案資料の型を作成し、暗黙知を形式知に変換するのです。
若手営業に小規模案件を任せながら、定期的な振り返りミーティングで成功パターンを共有していきます。段階的に権限委譲を進めることで、最終的には主力商品の大半がチームで受注できる体制を構築し、社長は経営戦略の立案に集中できるようになります。
よくある失敗パターンと回避する方法
中小企業のチーム体制づくりでは、いくつかの典型的な失敗パターンが見られます。
最も多いのが、完璧な仕組みを一気に作ろうとして挫折するケースです。全商品の営業マニュアルを同時に作成しようとすると、作業量に圧倒され途中で頓挫してしまいます。専門家は、まず主力商品1つだけに絞って標準化を始めることを推奨しています。
営業支援ツールを導入したものの現場が使わず形骸化する失敗も少なくありません。この場合、現場の営業担当者を巻き込んで必要な機能を一緒に考えることで、定着率は大きく向上します。
注意すべきは、社長が「任せたつもり」でも結局介入してしまうパターンでしょう。重要案件で不安になり手を出してしまうと、営業担当者の成長機会を奪い、体制づくりが進みません。失敗を学びの機会として受け入れる覚悟が、社長には求められます。
明日から始められる第一歩と継続するための工夫
チーム体制づくりへの第一歩は、驚くほどシンプルです。まずは自分の営業活動を1週間記録してみましょう。
商談に費やした時間、提案内容、クロージングのタイミングなど、日々の行動を書き出すだけで、暗黙知が見える化されます。
営業担当者と30分の対話の時間を作り、「どんな場面で困っているか」を聞き出してください。現場の声から、最初に型にすべき営業プロセスが明らかになるでしょう。
継続のコツは、小さな成功体験を積み重ねることです。月1回15分の営業ミーティングで成功事例を共有し、できたことを承認し合う文化を作りましょう。完璧を目指さず、まずは一歩を踏み出す。その積み重ねが、自分がいなくても売れるチームへの確実な道となります。
まとめ
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。営業の属人化という課題は、多くの中小企業経営者が抱える共通の悩みです。しかし、完璧を目指さず小さく始めることで、必ず道は開けます。最後に、本記事でお伝えした重要なポイントを改めて振り返ってみましょう。
- 社長が営業を担う体制には、売上停止リスク、機会損失リスク、成長鈍化リスクという3つの深刻な問題が潜んでいる
- 営業組織化は「現状の可視化と意識改革」「小さく始める仕組み化」「定着サイクルの確立」という3つのフェーズで段階的に進める
- 一度にすべてを変えようとせず、まずは1週間の営業活動記録や主力商品1つの標準化から始めることが成功への近道となる
自分がいなくても売れる組織を作ることは、社長の価値を下げるのではなく、より高い次元の経営者としての役割を果たすための第一歩です。明日から、いえ今日から始められる小さな一歩を踏み出してみませんか。あなたが築いてきた営業ノウハウを組織の財産に変え、次世代に受け継いでいく。その過程こそが、持続可能な成長への確かな道となるでしょう。
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